間が空いてしまったけれど小野寛晰『情報科学における論理』の読書ノート。なるべく練習問題も解いてく。(→前回)
2021-11-13 読み返してて気になる点があったので一部を訂正
第2章 述語論理
述語論理の論理式
言語
述語論理を記述するのに必要な以下の記号の集まりを言語(language)という。
論理結合子 :
量化記号 :
対象変数 : 議論対象の「もの」の集合を動く変数
対象定数 : 議論対象の「もの」の集合のうち特定の要素を表す記号
関数記号 : 議論対象の「もの」の集合上に定義された関数を表す記号
述語記号 : 議論対象の「もの」の集合上に定義された述語を表す記号
補助記号 : 括弧やカンマなど
これらはあくまで記号であって、その記号が表す「もの」と同一視してはならない。関数 と「 」という記号(文字)は別のものだと意識する。
項
対象変数、対象定数は項(term)
が 変数の関数記号、 が項のとき、 は項
論理式
が 変数の述語記号、 が項のとき、 は論理式(formula)。この形を特に原子論理式(atomic formula)という
が論理式のとき、 は論理式
が論理式、 が対象変数のとき、 は論理式
束縛変数と自由変数
論理式 に於いて変数 の出現(occurrence)を束縛された出現といい、 を束縛変数(bound variable)という。反対に束縛されていない出現を自由な出現といい、その変数を自由変数(free variable)という。
自由変数のない論理式を閉じた論理式(closed formula)といい、論理式 のすべての自由変数 を全称記号で束縛した論理式 を の閉包(universal closure)という。
代入
論理式 の自由変数 を項 で置き換えた論理式を と表し、 への の代入(substitution)という。特に複数回の代入を順序を設けず同時に実施する際は のように表す。
構造
言語 に対して次の からなる2つ組を の構造(structure)という。
は の対象変数が動く空でない集合。対象領域(domain)
は の対象定数を の要素に、関数記号を 上の関数に、述語記号を 上の述語に対応させる写像。解釈(interpretation)
解釈 による像は ではなく と表記するのが一般的な模様。
論理式 が構造 で正しいことを で表す。
構造により「記号」と「記号が表す『もの』」とが関連付けられる。つまり記号列であった論理式に具体的な意味が生まれる。
言語 とそれに対する構造 があるとき、 の各要素 に対応する各記号 を の対象定数に追加して新しい言語を定義できる。この言語を で表す。
恒真な論理式
ある言語上の論理式 が任意の構造に於いて正しいとき は恒真である(valid)といい、 と表す。
練習問題
問2.1
1)-1 「ある学生が存在し、すべての教師が好きだ」すなわち「教師を好む学生がいる」
1)-2 「すべての怠け者はすべての教師が好きでない」すなわち「怠け者は教師を好きではない」
2)
問2.2
1) 「任意の実数 について、 ならば かつ を満たす実数 が存在する」すなわち「実数は稠密である」
2) 「任意の実数 について、 かつ ならば 」すなわち「関係 は推移律を満たす」
問2.3
に が出現しない、かつ に が出現しないこと
問2.4
等しいとはいえない。以下いずれをも満たす必要がある
に が出現しないこと
を または としたとき、 に自由変数 の出現する 、 自由変数 の出現する 、 自由変数 の出現する がいずれも の部分論理式でないこと
問2.5
1)-1 成り立たない。最大元は存在しない
1)-2 成り立つ。 のとき とし、それ以外は とすればよい
2)-3 成り立つ。 のときなど
2)-4 成り立たない。 のときなど
問2.6
1)
2)
3)
問2.7
1) (自然数に最小元は存在するが整数には存在しない)
2) (「間にどんな要素も挟まらない異なる2要素が存在する」の意。整数では正しいが有理数では正しくない)
問2.9
8) 構造 をとる。但し を とし、 に大小関係 をとる。このとき任意の自然数に対して真に大きい自然数は存在するが、すべての自然数より真に大きな自然数は存在しない。つまり かつ 、従って 。
9) 構造 をとればよい。但し を とし、 に「1である」をとる。
14) 構造 をとる。但し を とし、 にそれぞれ「偶数である」、「奇数である」をとる。このとき明らかに 、よって 。一方これもまた明らかに 。従って 。
15) 構造 をとればよい。但し を とし、 にそれぞれ「0または1である」、「1である」をとる。
問2.10
恒真でない。 となるような構造 を示せばOK。
問2.11
1)
2)